研究概要 |
近年我が国において高脂血症や糖尿病に基づく動脈硬化性疾患が増加しているが,さらにその基盤として肥満が大きな意義をもっている. しかし肥満の合併症は必ずしも肥満の程度とは相関せず,むしろ脂肪の蓄積部位が関連することが最近知られてきた. 我々は独自に開発した脂肪組織の分析法(CTスキャンを導入したもの)を用いて身体各部の脂肪分布を分析した結果,同じ肥満でも腹腔内に脂肪が蓄積するタイプ(内臓脂肪蓄積型肥満)は皮下に脂肪が蓄積するタイプ(皮下脂肪蓄積肥満)に比べ,糖代謝異常や高脂血症等の代謝異常を高率に合併することを明らかにし,肥満を脂肪分布によって上記の二つの型に分類する新しい概念からの分類を提唱した. 本研究では, さらに肥満の治療によって脂肪組織の減少が起こる際,内臓脂肪の減少の低度と代謝異常の改善の程度が相関することを明らかにし,内臓脂肪の代謝異常に対する関与をさらに確認した. またラットの腹内側核(VMH)破壊により肥満モデル動物を作成し内臓脂肪として腸間膜脂肪の重量と代謝との関連を検討した結果,腸間膜脂肪の増加と空腹時血糖及び血清トリグリセライドが有意に相関し,ヒト症例の成積が動物においても確認された. さらに腸間膜脂肪の重量と門脈血の遊離脂肪酸(FFA)濃度が有意に相関した. 即ち腸間膜脂肪の蓄積は門脈血のFFA濃度を上昇させ,門脈系を通じて直結している肝臓に作用し,インスリン抵抗を惹起したり,脂質の合成亢進をもたらす可能性を明らかにした,内臓脂肪の増加を来たす機序としては,食事因子の検討がなされ,高庶糖食を与えたVMH肥満ラットにおいて普通食群に比し腸間脂肪の相対的増加がみられ,それは細胞容量の増大によることを明らかにした. またpreadipocyteを用いた培養系での検討で,内臓脂肪は皮下脂肪に比し,成熟脂肪細胞への分化能が悪いことが明らかになり,逆に成熟細胞自身の増大が起こりやすい事が推察された.
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