研究概要 |
1.ヒト胎盤性インスリン受容体タンパク貭(HIRP)のペプチドフラグメントの化学合成:HIRPαーサブユニット(9ー154)領域について6画分, (314ー731)領域は16画分, またβーサブユニット(736ー929)領域は8画分に分割し, それぞれに相当するアミノ酸20〜30残基よりなるペプチドフラグメント計30種を化学合成した. 合成は固相法によっておこない, 最終生成物はHPLCにより高純度に精製した. 2.合成ペプチドフラグメントに対する抗血清の作製:上記1で得た各合成ペプチドは, 順次, ポリビニルピロリドンに吸着した形のものを抗原として家兎に免疫注射し抗血清を作製した. 現在までに, HIRP(30ー61),(48ー77)および(736ー760)を抗原として作製した抗血清は特に高い抗体価を示し, 本研究の目的の為に十分使用しうるものであった. 3.抗合成ペプチド血清をもちいる免疫組織化学的研究:上記2で得たregion-specific抗インスリン受容体血清をもちいてヒト胎盤組織を免疫染色したところ, いずれも合胞体栄養細胞膜と特異的に反応した. HIRPの互に〓れた部位を認識するこれら抗血清が同じ細胞膜を免疫染色することを明らかにした本研究の結果は, ここに作製した抗合成ペプチド血清の有効性を証明するものである. なお, ラット肝臓にもこれら抗血清と反応する膜成分を認めた. 4.抗合成ペプチド血清をもちいるインスリン結合部位の解析:ヒト胎盤可溶性膜標品をもちい, インスリン結合反応に対する各抗血清の阻害効果を検討した結果, 抗HIRP(30ー61)および(48ー77)が明らかに阻害活性を示し, これによりαーサブユニットN端部がインスリン結合に関与していることを示した. 一方, βーサブユニットN端部は関係していなかった. 以上本年度研究実施計画の全てを完了した.
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