(1)ヒト胎盤性インスリン受容体タンパク質(HIRP)のペプチドフラグメントの化学合成:HIRP分子について、βーサブユニット(953ー1355)配列中、特にインスリン結合後の生化学的反応に重要と考えられる(957ー980)、(991ー1015)、(1012ー1042)、(1139ー1171)、(1201ー1233)、(1247ー1265)、(1309ー1340)および(1327ー1355)配列に相当するペプチドを、それぞれ固相法により合成し、高純度に精製、その構造を確認した。 (2)合成ペプチドフラグメントを抗原とする抗インスリン受容体特異抗体の作製:上記合成ペプチドを抗原として、これらをポリビニルピロリドンに吸着、家兎に免疫・注射した。HIRP(957ー980)、(1139ー1171)、および(1327ー1355)に対しては高力価の抗血清を得た。HIRP(1012ー1042)、(1201ー1233)、(1247ー1265)、(1309ー1340)の各合成ペプチドに対しても、現在、家兎血中の抗体価が上昇しつつある。 (3)合成ペプチドならびに特異抗血清をもちいる生化学的研究:(a)抗HIRP(957ー980)抗体をもちいてHIRP特異RIA系を確立し、これによりヒト胎盤性インスリン受容体の2種の分子種を分別証明するとともに、それらのインスリン結合能に対するpHならびに塩濃度の影響の特異性を明らかにした。(b)ヒト肝がん由来培養細胞PLC/PRF/5にインスリン受容体の存在を証明するとともに、そのインスリン結合能と、抗HIRP(30ー61)、(48ー77)、および(734ー760)抗体を用いて免疫化学的に解析した。 (4)特異RIA系の確立:抗HIRP(30ー61)、(48ー77)、(957ー980)、(1139ー1171)、(1327ー1355)抗体を用い、HIRP特異RA系を確立するとともに、RIAによるインスリン受容体の測定をはじめて可能にした。 (5)ヒト赤血球インスリン受容体の免疫化学的解析:上記の如く得られたHIRP特異RIA系を用い、ヒト赤血球インスリン受容体の定量が可能となり、胎盤由来のHIRPと免疫化学的に比較検討した。
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