研究概要 |
1.わが国(大阪・和歌山地域)における本症の頻度調査 現時点で検索ずみの健常者, 糖尿病症例計2000例において, 異常インスリン血症に特徴的な検査所見である血中IRI/CPRモル比異常高値を伴なった高IRI血症例は13例見い出された. これらのうち2例はインスリン治療歴がないのに血中抗インスリン抗体の存在が証明され, インスリン自己免疫症候群と診断された. また, 1例はインスリン受容体異常症(C型), 1例は異常インスリン, Insnlin Wakayama血症第1家系の血縁者であり, 残りの9例に関しては現在検索中である. また, 今回の多数例検索の結果, 育常インスリン血症とは直接的な関係はないが, 血中IRI/CPRモル比は, (i)耐糖能の悪い者程高値となっている. (ii)同程度の耐糖能やコントロール状態を有する糖尿病症例でも, 食事療法群に比しスルフォニールウレア剤療法群の方が有意の低値である. ことなどが判明し, 本モル比は生体内でのインスリン代謝状態を鋭敏に反映していることが強く示唆され, この方面の研究での有用性が期待される. 遺伝子レベルでの検索に関しては, 予定どおりの備品を購入し, Set upは既に完了, 検索中である. 2."Insulin Wakayama([Leu^<A3>]insulin)"の生理作用の検索 ラット脂肪細胞における3種類の半合成異常インスリンの受容体結合能(RB), 糖転送亢進能(GT), 糖酸化亢進能(GO)を調べた結果, 正常ヒトインスリンの成績を100%と規定すると, [Leu^<A3>]insulinのRB,GT,GOは全て0.3〜0.8%と著明な減弱を示し, Insulin Chicago([Leu^<B25>]insulin)やInsulin LosAngeles([Ser^<B24>]insulin各々の成績(1.9〜2.8%,0.5〜1.8%)と比較しても最も減弱しており, インスリン分子中A鎖3位はB鎖24,25位以上にその生物活性に重要であることが判明した.
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