〈目的〉甲状腺細胞の合成するプロテオグリカン(PG)が甲状腺ホルモンの合成・分泌とどのような関係をもっているかを明らかにする。 〈方法〉甲状腺ホルモンの合成・分泌は甲状腺組織濾胞を機能単位として行われるため、培養細胞は不適当であり、ラット甲状腺組織の器官培養を用いた。10%FCSを含むHAM'SF12培養液に甲状腺組織を器官培養し、1)24時間^<35>S.^3Hとインキュベ-ト、または^<35>Sと^<125>Iとインキュベ-トし、合成・分泌されるプロテオグリカンの特性を解析した。 2)1)により24時間^<35>Sと共にインキュベ-トした甲状腺組織を^<35>Sを含まない培養液に移し、0、3、8、24時間インキュベ-トし、ラジオオ-トグラフを行い、^<35>Sグレインの移動を観察すると共にTSH存在下で培養液中、組織中にどのようなプロテオグリカンが合成・分泌されるかを検討した。〈成績〉1.甲状腺組織はコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)を合成する。グリコサミノグリカン鎖の分子量は約3万、この糖鎖が1〜2本コア蛋白に付着した分子量10万程度の小さなPGが主体である。ところが一部にはサイログロブリンにグリコサミノグリカン鎖がついて特殊なPGが少量(1%以下)ではあるが存在することが明らかとなった。これらのプロテオグリカンは甲状腺上皮細胞で合成とされて甲状腺濾胞中に分泌され、濾胞中で濃縮されることがオ-トラジオグラフで明らかにされ、これは濾胞としての形態を維持するのに必要な機構であることが細胞とそのプロテオグリカンの関連からも推察される。TSHにより甲状腺組織が刺激されると、培養液中にはCSPGのみが分泌されHSPGは分泌されてこない。 〈結論〉甲状腺組織はPGを合成し、濾胞中の形態の維持やホルモン分泌に利用していることが明らかにされた。
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