研究概要 |
甲状腺細胞や甲状腺組織がプロテオグリカン(PG)をどのように合成代謝し、特殊に分化した甲状腺のホルモン合成、分泌機能に利用しているか従来全く知見がなかったので、この面を研究することにした。 1.甲状腺細胞増殖とプロテオグリカンの関連:ラット甲状腺培養細胞において、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)とヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)が合成され、TSH、パセドウ病IgG、cAMP、IGFなど細胞増殖を刺激する条件でプロテオグリカン合成が高まり、細胞増殖と密接な関連のあることが明らかとなり、Journal of Biological Chemistry263:1745、1988に報告した。 2.甲状腺ホルモン分泌とプロテオグリカンの関連:甲状腺ホルモン分泌におけるPGの役割は、甲状腺細胞でなく,漏胞構造の維持された甲状腺組織器官培養で調べるのが適当である。この系でもPGは活発に合成これる。CSPGは主として細胞外に分泌され、この分泌はTSH濃度に依存して増加するが、HSPGは組織内にとどまり分泌されない。^<35>SO_4によるオ-トラジオグラフで検討すると、PGはあたかもサイログロブリンのように上皮細胞から漏胞控に分泌され漏胞内に濃縮される。PGがホルモン分泌過程に密接な関連のあることが明らかにされ、この内容を1989年米国内分泌学会総合において報告した。 3.甲状腺疾患、特にバセドウ病の合併症とプロテオグリカンの関連:バセドウ病では甲状腺細胞を異常IgGが刺激し甲状腺機能亢進症を起こすが、このIgGが線維芽細胞の受容体を刺激してPGを過剰に産生し、限局性粘液水腫が生じていることを明らかにし、1989年米国甲状腺学会で報告した。悪性眼球突出症も眼窩線維芽細胞によるPG産生が関連すると考えられる成績を得つつあり、現在、検討中である。
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