研究概要 |
1.インターロイキン1(ILー1)の作用機構:ILー1添加によりILー2受容体p55の発現増強が起きるYT細胞を用いて、ILー1α,ILー1βを加えた時の細胞内Caイオン濃度変化をQuin2法により調べたが、有意の上昇は認められなかった。次に、ILー1添加後のアラキドン酸カスケード代謝産物のうち、リポキシゲナーゼ系代謝産物、LTB_4、5ーHETE、12ーHETEの変化を高速液クロにて解析したが、有意な産物の上昇は認められなかった。また、細胞膜フォスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミンよりのアラキドン酸への切り出しに対するILー1の影響を調べたが、フォスフォリパーゼA_2によるアラキドン酸産生増加を示すデータは得られなかった。このように、ILー1添加後の細胞内代謝変化は、検討したいずれも陽性の結果は得られなかった。2.T細胞活性化関連抗原に対する2種のモノクロナル抗体:ILー1受容体に対するモノクロナル抗体作製の過程で、T細胞活性化に関連した抗原を認識する2種の興味ある抗体が得られた。2H7抗原は、非刺激リンパ球や短期培養細胞には出現せず、ILー2で長期培養したT細胞や、一部の細胞株に発現する。2H7抗原発現とILー2受容体p55発現との間に相関が認められ、また、2H7抗体はILー2依存性増殖をほぼ完全に抑制することから、この抗原は、T細胞活性化に関連し、ILー2/ILー2受容体を介する細胞増殖と密接に関連した抗原であると考えられる。2C2(HC22)抗原は、PHA刺激リンパ球の17ー21%に出現する、分子量約16,000の蛋白である。その機能は現在のところ不明であるが、ATL患者白血病細胞に高率に出現することから、今後のT細胞活性化機構の研究にとって有用な抗体の一つであろう。
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