研究概要 |
ヒト巨核球系幹細胞に与える種々の増殖因子の影響をヒト巨核球コロニー培養法で検討した. 特にこの研究期間にヒトの巨核球コロニーの無血清培養法を確立した. その方法はヒト骨髄単核細胞を0.3%寒天中に埋め込み7〜10日培養した. その培養にはウシ胎児血清の代わりに, ウシ血清アルブミンやトランスフェリンを含むASF101培養液を用いている. さらに培養終了後, 寒天をまるごと固定し, 血小板糖蛋白IIb/IIIaに対するモノクローナル抗体を用いた免疫学的手法を用いて巨核球コロニーを同定した. したがって, 全ての巨核球コロニーを容易に同定出来るようになった. これまでヒトの巨核球コロニー刺激因子(MegーCSF)として, PHA刺激白血球培養上清, エリスロポエチン(Ep), 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMーCSF)などが報告されている. われわれはこの無血清培養法を用いたヒトの組換え型インターロイキン3(ILー3)がヒトのMegーCSFであることを明らかにした. EpやGMーCSFはMegーCSFとしての作用は認められなかった. EpはILー3と共に添加すると巨核球コロニー数を増加させ, また一つのコロニー中の巨核球数を増加させた. つまり, Epには巨核球増巾因子としての作用があることを証明した. しかし, GMーCSFをILー3と共に添加しても巨核球コロニー数は増加せず, GMーCSFには巨核球増巾因子としての作用もないことを明らかにした. また. 顆粒球コロニー刺激因子(GーCSF)にはMegーCSFや巨核球増巾因子の作用もない. ILー3のMegーCSFとしての作用は骨髄細胞からT細胞と付着細胞(主にマクロファージ)を除去しても認められるので, これらの細胞に作用し増殖因子を分泌させた結果ではない. この点をさらに明らかにするために, 血液幹細胞を同定するモノクローナル抗体My10を用いた免疫ロゼット法で巨核球系幹細胞を純化しマイクロマニピュレーターで採取し, 一つの幹細胞に対するこれら増殖因子の作用を検討中である.
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