研究概要 |
肝癌由来の腫瘍細胞, および前癌肝細胞と考えられているHyperplastic nodule(HN)細胞を, 同系ラットの脾内に移植した. 1.移植する腫瘍細胞としてはDAB肝癌を作製し(DAB投与5〜6カ月), この肝癌組織および肝癌細胞と, 佐々木研究所(東京)より腹水肝癌3種類, AH13,AH66F(自由細胞型),AH66(島を混ず)を送ってもらい, 新鮮および凍結腫瘍を用いた. 2.HN細胞は10週令のWistar系雄性ラットに0.025%2ーAcetylaminofluorene(AAF)含有飼料を30〜40日間摂食させ, 多発性のHNが肉眼的に認められるものより, Berry&Friendの方法によりコラゲナーゼ灌流し, HN部分を核出し, これを細切し細胞とした. 結果1: DAB肝癌移植により約5〜10日で脾内に大きな腫瘍塊を形成し, 他部位への移植とほぼ同じであった. 腹水肝癌細胞の移植は, 自由型は脾,肝に白血病様に, 島を混じ型は脾にのみ結節状に増殖した. 結果2: HN細胞は脾内に確実に生着した. その組織像は, 胞体の明るい大型細胞が索状に増生したところと, 小管腔をなす丈の低い細胞が集族するCholangioーfibrosisであった. DNA合成率はBromodexyuridine(Brd)抗体50mg/kg静注し, 1時間後に肝と脾を摘出し, ABCおよびH.E.染色を行ない, 細胞1,000個あたり核内に取り込んだBrd Uの細胞を数えた結果, 移植一週目肝細胞巣が20〜35, 胆管細胞巣が45〜55と高率であった. 本年度は, 主に腫瘍細胞を脾内に移植し, 移植した細胞による生着,増殖状態の観察を進めた. 次年度は, HNのできた比較的早い時期と, hepatocellular carcinoma(HC)あるいはその少し前の時期の細胞を移植し, 比較すること, またこの時に宿主ラットに肝切除,Cyclosporineなどを投与し, 移植されたHNおよびHCがどのように変化するかを観察する.
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