研究概要 |
今年度は主に新生児・乳児について全麻手術前後の侵襲に関するホルモンの経時変化を観察し手術侵襲に対する生体反応を検討した. 交感神経・副腎髄質系はカテラミン(CA)であるが,血中エピネフリン(E,n=24),ノルエピネフリン(NE,n=24)とも術直後より上昇するがピークはNEがやや遅れる傾向にあり,またE,NEとも術後1週しても術前値に復帰しなかった. 手術侵襲スコア(SSS)とCAピーク値との関係はNEとは相関したがEとは相関しなかった. 下垂体・副腎皮質系は尿中OHCS(n=14)を検索したが, 術後2日頃にピークを示し5日目には術前値に復した. SSSと17OHCSピーク値とは相関を示した. βーendorphin(βーEP)はACTHと前駆体を共にし,その鎮痛作用とともに侵襲とも関係すると考えられており同様に検討した. 血中βーEP(n=12)も術後上昇し2日頃にピーク値を示し4日頃には術前値に復した. SSSとβーEPピーク値とは相関するようにみえたが,例数が少ないためか統計的には相関はなかった. 下垂体・副腎皮質系は上位中枢の視床下部より分泌されるCRF(corticoーtropinーreleasing facaor)により賦活されることが知られているが,最近さらに CRFが交感神経・副腎髄質系をも賦活することが明らかになりつつある. 従って侵襲ホルモンの賦活系をより総括的に把握する必要が生じ,従来測定してきたホルモンに加え血中CRF,ACTH,CorAisolの他さらに侵襲を関係する血中GRF(grow hormonーreleasing factor)およびGH(growth hormon)の測定を開始した. 検索例が少なく本格的な解析は未だ不可能であるが術後の推移をみるとCRFとACTH,CorAisolあるいはCRFとCAの間に相関性はなかった. ACTHとβーEP,GRFとGHは各々ほぼ併行する動きを示した. これらの新指標と術後経過期間あるいはSSSとの関係は今後症例数を集積し明らかにしていきたい.
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