研究概要 |
雑種成犬を用いて, 全麻下に膵を剔出し, コラゲナーゼを作用させて膵ランゲルハンス氏島(以下膵ラ氏島)を分離, 組織培養後に凍結保存した. 各プロセスごとに実体顕微鏡による形態学的観察, ならびに培養液中にglucoseを添加し, インスリン分泌量を測定するviability試験を行い, イヌ膵ラ氏島の分離, 凍結前培養, 凍結法について, 至適條件を検討した. 現在までにえられた知見は以下のごとくである. 1 分離法:膵間質内の強固な線維成分を消化し, しかも膵ラ氏島への障害を可及的軽減するためにコラゲナーゼの濃度, 作用温度, 作用時間を検討した結果, 至適條件は (1)コラゲナーゼの濃度を6mg/ml,(2)作用温度39℃,(3)作用時間24分であった. さらに, コラゲナーゼ作用期間中は振盪を加え, 作用時間経過後は急冷し, 細切, 遠心する方法が有効であった. 2 凍結前培養法:分離に際して損傷された膵ラ氏島被膜を組織培養によって修復した後, 凍結保存したが, 至適培養條件はりRPMl1640倍地に10%牛胎児血清を添加, 2)CO_25%,air95%,3)37℃,4)48時間であった. 3 凍結法:膵ラ氏島浮遊液1mlに対して, DMSO10%, 牛胎児血清10%を加えたHanks'buffer salt solution10mlを加え20分放置, ついでプログラムフリーザーで10℃までは2℃/min,以後-5℃まで1℃/minで冷却, ここで60秒間植永操作を加え, 以後-80℃まで冷却し, -196℃の液体窒素中に保存した. 解凍後, 組織培養し, glucose添加によるインスリン分泌能をみた結果は, インスリン分泌能は保持されていた. 糖尿病犬に自家移植し, 糖負荷に対する血糖の椎移をみたところ糖尿病パターンの改善がみられた.
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