研究概要 |
1)動物実験:MOFモデルとして体重250grのS.D.系ラットの盲腸結紮穿刺による敗血症作製を行なった. まず生存率より絶食群と非絶食群とに分け,これを重症敗血症モデルと軽症敗血症モデルとに2分し検討をおこなった. 重症モデルでは血圧および肝血流の低下が著明であり, 肝エネルギーチャージはもとより, 組織アデニンヌクレオタイド量も著減を示した他, 末梢血でエンドトキシン血症を示した. これに比して軽症モデルでは, 血圧および肝組織血流はほとんど低下を示さなかった. しかしフリーラジカルの生成が軽度ではあるが観察された. エネルギーチャージおよびヌクレオタイド量にはほとんど変化は認められなかった. 末梢血中のエンドトキシン濃度も上昇は軽度であった. これらの結果より, 重症モデルではエンドトキシン血症と肝虚血によるフリーラジカル生成の亢進, エネルギーチャージの低下をもたらし, MOFを広範に引きおこしていることが想定された. 2)臨床成績:これまで10例の肝不全および2例の多臓器不全症例に血漿交換および血液濾過療法を施行した. 血中エンドトキシン値は血漿交換を連日施行することにより著明な減少を示することが判明した. なたエンドトキシンレベルはDICの示標であるFDP値とよく併行して変動し, またコンドロイチン硫酸鉄負荷による網内系機能検査ともよく相関を示した. このことより肝不全時のエンドトキシン血症はDICと密接なつながりを持ち, また網内系機能不全がその背景として存在することが示唆された. 一方血漿交換治療前後のフリーラジカル産生を過酸化脂質濃度で検討すると, 肝不全ではむしろ血漿交換により上昇を示す例が多く, その様な症例は低プロトロンビン値をとる傾向が有意にあり, また死亡率も高いことが判明した. 重症肝障害時の血液浄化療法時にはフリーラジスルスカベンジャーの併用投与の必要が示唆された.
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