研究概要 |
昭和62年度科学研究費を得ることができ,以下の研究成果をあげることができた. 雑種成犬を用い,総胆管結〓を行うことにより開塞性黄疽実験モデルを作成した. その病態時の剔出膵の灌流実験を行い,正常時の膵との比較検討を行った. その結果,病態時および正常時において,1)膵において常時,内因性Proskaglandin(PG)が産生されている. 2)Cholecystokinin(CCK)は膵の内因性PG産生を促進する. 3)CCKはInsulinおよびGlucagon産生を促進する. 4)CCKは血中amyluseを上昇させる. 5)cckにより上昇した血中amyluseはIndomethacin処理により低下傾向を示し,外因性PGにより有意に低下し,PGは膵障害に対してCytoprotectiveな作用を有することが示唆された. 6)外因性および内因性PGは膵血流量,膵外分泌および内分泌に関して重要な役割を有していないことが示唆され,黄疽時には,7)膵外分泌は亢進することを認め,黄疽膵細胞はCCKに感受性が亢進していることを示した. また,8)PG産生も亢進しており,これも黄疽膵細胞はCCKに対しての感受性亢進によるものと考えた. 9)INsulin産生は減少し,Glucagon産生は増加傾向を認めた. また,開塞性黄疽時の肝におけるInsulinおよびGlucagon代謝を検討し,黄疽肝ではInsulinの不活化能は低下している事実を認め,10)黄疽時の耐糖能の低下および低Insulin低反応は,肝におけるInsulinの不活化能が亢進しているためではなく,黄疽時には膵のβ細胞の障害が主な原因であることを見い出した. これらの成績を別紙のごとき学術誌に投稿し,第5回消化器臓器相関研究会,第31,32回消化器外科学会総会,第18,19回膵臓学会,第73,74消化器病学会総会および第87,88回日本外科学会総会に発表あるいはその予定である.
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