前粘土までの研究では、小児開心術時に起こり得る急性心不全に対する補助循環法の開発を目的として、通常の体外循環で拍動流発生に用いられるディスポーザブル・バルーンユニット(コントロン社製)を上行大動脈と大腿動脈間に着想してバイパスを作成し、大動脈内バルーンパンピングと同じ要領で心電図に同期してバルーンを収縮、拡張させて、圧曲線波形からは満足すべき結果を得た。さらにシメル酸ガベキサート45〜65mg/kg/minの使用により、ヘパリン使用量も減量出来た。ただし前年度までの実験においては、装着部位からの出血が問題となったため、中枢側の上行大動脈へは腕頭動脈から、末削側へは大腿動脈に直接カニュレーションせざせるを得ず、臨床応用を考える時には問題であった。 今年度は、ユニット装着に人工血管を介する方法を行った。懸念された出血、圧波形の歪形はなく、デバイスへの血液汲み出し、拍出が無理なく出来て補助循環効果は一層確実に得られるようになった。 心不全に対する効果を検討するため、犬心の冠動脈前下行枝の分枝を結紮して1時間放置、左房圧15mmHg以上になればその状態で、15mmHg以下であれば15mmHg以上にあるまで輸血を行い、その後上記補助循環を施行して経時的に観察した。 心拍出量はこれまでの結果ではばらつきがあって一定の傾向を見出だせないが、平均18mmHgの左房圧が補助循環開始後5分で下降し、1時間補助循環して中止30分後には平均7mmHgの低下、同様に上昇していた左室拡張末期圧も平均10mmHg下降し、十分な補助循環降下がみられた。 動脈内への直接力ニュレーションでは溶血のみられた例もあったが、人工血管使用するようになってからは、溶血も少なくなった。 本法が人工血管介在で、当初予期したよりも容易に効果的な補助循環が可能となったことで、臨床応用への目途がついて来たと考えられる。
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