研究概要 |
同所性心肺移植の呼吸運動に及ぼす影響をヒヒの心肺除神経モデルならびに, ニホンザルの同種同所心肺移植において検討した. ヒヒの除神経は脳骨正中切開下に行ない, 心肺を胸郭ならびに後縦隔より気菅, 大動脈, 上下大静脈・奇静脈を除き完全に剥離した. 術前・術後において動脈血ガス分析を行なうとともに, 呼吸運動を日本電気三栄製胸囲型呼吸ピックアっプを用いて記録した. 術前の呼吸数は28回/分吸気相と呼気相の間の喬化もなめらかであった. 術後呼吸はリズミカルではあるが深くゆっくり(23回/分)となり, 呼吸気組において呼吸が停止するというパターンに変化した. 術前の血液ガスは, pH7.36 _1CO_249.1mmHgPO_275.8mmHg(room air)であった. 術後にはpH7.23,PCO_256.9mmHgPC_2262.3mmHg(FiOe=0.5)となった. 72日後に呼吸は, 20回/分とさらに遅くなったが, 呼吸パターンは術当日と同様であり, 動脈血はpH7.35PCO_259.4mmHg PO_279.1mmHg(room air)であった. 心肺同時移植を行なって, 5〜33日間生存したニホンザルにおいて, ヒヒにおけるのと同様の検索を行なった. 検索は術後14日目まで行なった. 動脈血の炭酸ガス分圧は, 術前後で有意差がなく換気能力は術後保たれていたと思われたが, 呼吸数はやや減少した,呼吸パターンはヒヒ同様に変化した. 呼吸サイクルに占める, 呼吸時間・吸気時間の比率は術後著明に減少し, 有意な差を認めた. この変化は, 従来犬の点験で報告されてきた変化と類似するが, 犬とは異なり, 日本猿においては, 生存に関して影響がなく, 呼吸・(換気)運動障害による死亡は認められなかった.
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