本研究においては、冠動脈造影時に冠動脈硬化病変の程度を定量的にかつ客観的に評価する方法を開発せんとした。本研究の独創性は、「冠動脈内容積が造影剤によるX線不透過度に関連することに基づいた冠動脈狭窄度評価法」を考察したことにある。すなわち、血管の真の狭窄程度は単位長の血管内容積により規定されるものと考えられ、さらに血管内の造影剤容積はX線不透過度に影響するものと考えられる。 昭和62年度においては、ELK冠状動脈解析装置(CORONARY DENSITY ANALYZER:CDA)を西本産業と共に開発作成した。本CDAを用い、モデル実験を行った。本検討の結果、造影剤濃度を考慮することにより、チューブの実測断面積とCDAを用いてフィルム上の濃度変化曲線より算出した径が回帰関係にあることを明らかにした。 昭和63年度においては、冠動脈を想定したファントームによるモデル実験を行い、2方向同時撮影像からの冠動脈の3次元的再構築を行うべく、2方向各々の空間的濃度変化曲線の同時かつ空間上での解析を試みた。本検討においては、ラプラシアンフィルターを応用した辺縁検出による座標軸の決定がより正確であることが示唆された。しかしながら本法においても特に狭窄部の辺縁検出には限界があり、更なる検討が必要と考えられた。 最後に、本法の臨床応用を試みた。AHA分類の狭窄度と本評価法より算出した冠動脈狭窄の間には、順位相関関係は成立したが数値そのものは必ずしも一致しなかった。 以上より、「冠動脈内容積が造影剤によるX線不透過度に関連することに基づいた冠動脈狭窄度評価」は可能であると考えられた。さらに、本評価法は冠動脈硬化病変の程度を定量的にかつ客観的に評価する方法として有用であることが本研究により示唆された。
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