研究概要 |
人工血管を用いて解離性大動脈瘤のモデルを作成した. 全長200mm,径10mmの人工血管の, 中央120mmの部分をさらに径20mmの人工血管で取り巻くように縫着, 2つの血管に囲まれる部分を解離腔, 内側の血管内を真腔とみなした. 2つの腔は, 1ヶ所もしくは2ヶ所において, 10mmの孔(entry,reーentry)で連続するようにした. また, 2つの血管壁の3ヶ所に壁側圧を測定するための測定管を壁に垂直に取り付け, 真腔および解離腔の圧が測定出来るようにした. モデルは, 中枢側でのみ2つの腔が連続するもの(a),中枢側, 末梢側の2ヶ所で腔が連続するもの(b),末梢側でのみ2つの腔が連続するもの(c)の3種類を用意した. これらのモデルグラフトを, 全身麻酔下に左開胸でイヌ(体重16〜25kg)の下行大動脈と置換した. 流量はグラフト末梢側に取り付けた電磁流量計で測定した. 又, 流量は薬剤による調節した. 流量1l/minで中枢側にのみentryを有する(a)の場合には, 解離腔内の収縮期圧は高値を示し, 末梢側にのみentryを有する(c)の場合には低値を示した. (b)の場合にはこれら(a),(c)の中間の値を示した. 今回用いたモデルでは, 中枢側にのみentryを有する(a)の場合, および末梢側にのみentryを有する(c)の場合には, 解離腔の圧はただ単に, 真腔におけるそれぞれのentry部の圧を反映しているものと考えられた. しかし, (c)の場合の圧低値については, 長さ120mmの二重管構造の真腔血管内の圧が何故下降するのかは現在のところ明らかではない. これら1つのentryを有する場合に比較し, 中枢側, 末梢側にentry, reーentryを有する場合には, 中枢側において真腔から解離腔に流入する点で圧差を生じたものと考えらた. これらの結果に基き, 次年度は, 拍動流, および定常流下における圧, および流れの変化を検討する.
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