研究概要 |
イヌの実験で用いたモデルグラフトに改良を加え、解離腔側に対応する真腔側の壁側圧も測定出来るようにした。また形態も6種類とし、上流側、下流側の共通孔(entryおよびre-entry)の大きさは、0m/m,5m/m,10m/mの組み合わせとした。これらのグラフトに624ppm Sodiumpolyacrylate溶液を用い、補助心臓で拍動流を、又、遠心ポンプで定常流を付加した。その結果、次のことが明らかになった。 1.拍動流において1)解離腔側圧は、その上流の非解離部分の側圧よりも低いが、程度はモデルの形状により異なる。2)最も大きく解離腔側圧が低下するのは、上流にentryを有さず、下流にのみ共通孔10m/mを持つ場合で、逆に、上流にのみ同じ10m/mの共通孔を有する場合には流量の増大に伴い解離腔圧は全く低下しなくなる。3)上流に大きなentryのある場合、下流に大きなre-entryが無ければ上流側解離腔圧は下降しにくい。4)真腔圧は、上・下流2ケ所の交通孔の大きさの異なるモデルグラフトにおいて最も良く保たれる。また解離のない抹消腔の圧は、交通孔が1ケ所のモデル以外は全て同等な圧・流量関係を示した。5)以上の関係は平均圧より収縮期圧でより著明であった。 2.定常流において1)上流にのみ10m/mの共通孔を有する場合、流量を増加させることで末梢に流れなくなるという現象は認められなかった。2)真腔圧は上流交通孔の径の小さい場合に良く保たれた。次に造影剤を用いてグラフト内の流れの観察をシネアンギオグラフィーで行った。定常流では、解離腔の流れは上流entryから流入した流れがそのまま下流re-entryから流出する一方向性流れであるのに対し、拍動流では、収縮期のある時期に上・下流の交通孔から同時に真腔より解離腔に激しいジェット流で流入し、次に主として下流交通孔から真腔へ流出して行くという複雑な流れであった。
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