研究概要 |
本年度は雑種成犬を対象とする肺移植(左肺単独)と, ラットを対象とした肺移植の2種の実験を主体に実施した. まず前者においては, 雑種成犬20頭を利用して, 通常の左肺単独移植を行ない, 気管支吻合部周囲に有茎で腹腔内より持ちあげた大網を被覆した. 移植手術後, 経時的に内視鏡的観察を行ない, 気管支吻合部の治癒過程を観察, 〓殺あるいは剖検死の際の組織所見と対比した. 大網移植の効果は吻合部治癒に有効な影響を及ぼす事が判明した. この結果については第10回日本気管支学会総会のワークショップ"肺移植実験における気管支鏡検査"においてその成果の一部を発表した. 更に論文"Lung allograft with and without omentopexy"としてJapanese Jourmal of Surgeryに提出中である. 移植時の組織所見, 特に拒絶反応を電顕的に検討した論文"Ultrastructural study on acute rejection・・・"はJoumal of Thoracic and Cardiovascular Surgeonに掲載された(別紙). 62年度後半は特殊な肺移植実験として, 異所性肺葉移植実験を行なった. すなわち10頭の雑犬を対象にrecipient犬の肺はそのままの形でdonorの一部肺(肺葉)をrecipient胸腔内に移植する方法である. 実験犬は全て1ヵ月内に死亡したがlimited lung transplantationとして評価されてよい実験と考えている. その成果は論文"An experimental trial for pulmonary lobe allotransplantation"としてThoraxに提出した. また62年末の肺・心肺移植研究会において発表した. ラットを対象として実施した肺移植は当初, 麻酔事故等でかなり死亡したが, 62年後半より手術自体も成巧するケースが増えた. 最長3ヵ月生存のラットが得られており, 現在更に生存数を増している状態である. 異種ラット間での肺移植が軌道にのれば拒絶反応部位の免疫組織学的検討を実施する(63年, 64年)予定である. なおラット肺移植実験については担当の筒井による論文"ラット肺移植実験の手術手技"が提出されている.
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