研究概要 |
本研究の目的は霊長類をドナーとする異種心移植の可能性を追及することにあり, 本年度は, 適切な異種ドナーの選択方法を確立する為に, 1)ヒトHLA抗血清(第10回国際組織適合性会桐提出の抗HLAーA,B,C抗血清468種, classlに対するモノクローナル抗体80種)を用いた日本猿10頭の組織適合性抗原タイピング;2)日本猿5頭のリンパ球に対する4人の血清による細胞障害性試験(直接交又試験);3)日本猿リンパ球を刺激細胞, ヒトリンパ球を反応細胞としたリンパ球混合培養試験の3つ実験を行った. 結果:1)HLA抗血清の30%は非特異的に日本猿に反応した. これらの抗血清を除いたものの中に, 日本猿の抗原系に対して特異的に反応するクラスターが存在すること, 又単一或は複数のヒト抗原系に対応した日本猿の抗原系が存在することが確かめられた. 2)同種移植における細胞障害性試験に準じた方法で行った直接交又試験において, 日本猿5頭何れにも反応を起こさないヒトが認められること, 4人のヒトの何れにも細胞障害されない日本猿が存在することが認められた. 3)ヒトリンパ球(反応細胞)と日本猿リンパ球(刺激細胞)の濃度比1:2, 10%ヒト非動化AB型血清内で5日間培養することによって, 同種間混合培養試験と同程度のstimulation indexを得た. 考察:1)ヒト抗血清による霊長類の組織適合性タイピングの結果による異種ドナーの選択は因難と思われた. 2)異種間の直接交又試験, リンパ球混合培養試験の結果によって, 適切な異種ドナーが選択できる可能性が示唆された. 異種移植臓器をヒト血液で潅流し, 病理形態的, 生理学的なviabilityを直接交又試験やリンパ球混合培養試験の結果と比較検討することによってより適切な異種ドナーの選択方法を確立させたい.
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