研究分担者 |
由谷 親夫 国立循環器病センター, 臨床検査部, 医長
川副 浩平 国立循環器病センター, 第二病棟部, 医長
榊原 泉 東レ研究所, 薬理研究室, 研究員 (90153866)
笹木 秀幹 金沢医科大学, 胸部外科, 講師 (60153996)
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研究概要 |
1.ヒト由来HLA抗血清を用いた霊長類(日本猿)組識適合性抗原系の解析:第10回国際組識適合性会議に提定されたヒト由来HLAーclass I抗血清463清、モノクロ-ナル抗体81種に関し、日本猿13頭の組識適合性抗原タイピングを施行した。463種抗血清中、136種は10頭以上の日本猿リンパ球と非特異的に強陽性を示し、また148種は日本猿リンパ球に対し全く反応を示さなかった。残り179種抗血清の解析を試みた。ヒト由来HLA抗血清によりヒト、日本猿の種のバリア-を越えて相関を示した単一HLA抗原は、A座でA1,A2、B座でB40,B5,B27、C座でCw1,Cw2であった。またHLA抗原系の交差反応性から、複数の抗原にまたがって相関を示す抗原系が確認された。霊長類を異種心移植のドナ-と考えた場合、共通のHLA抗血清により両者の組識適合性抗原系を同定し、その適合度より最適な異種ドナ-を選択することが可能なことが示唆された。 2.ヒト血液による日本猿心臓還流後の病理組識学的検討:日本猿4頭の心臓を(1)ABO型不適合ヒト全血液、(2)ABO型適合ヒト全血液、(3)ABO型適合血奨除去ヒト血液、の3種類のヒト血液を用い人工心肺により冠還流を行った。肉眼的所見では(1)、(2)何れもヒト血液還流15分以内に心筋浮腫、広範な出血性梗塞を認め、30分以内に心室細動となったが、(3)に関しては変化を認めず40分の観察中、心臓の挙動は概ね正常であった。左室、右室、心室中隔の病理組識学的検討では、(1)(2)において広範な間質内出血、contraction band necrosisをまた(1)(2)(3)全例にpatchy necrosisを認めた。血奨除去ヒト血液による冠還流(3)では、左室圧発生能は温存され、組識学的変化も軽度であったことから、ヒト血奨中の異種抗体が超急性拒絶反応を誘発すると考えられた。またレシピエント血液による他臓器還流は、ドナ-スクリ-ニングとして有効であることが示唆された。
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