本年度は、実験モデルの病態研究の総括およびエラスターゼ製剤投与の意義につき検討を行なった。 1)神経症状を示す家兎実験モデルについて 我々が作製に成功した、クモ膜下出血家兎実験モデルは、出血4〜5日後に四肢麻痺などの神経症状を示す、より臨床例に近いものである。本モデル作製法および症状・血管写変化に関する論文がStrokeに採用掲載された。また本モデルの病態、意義につき脳血流量・SEP・病理所見より検討を続け、その結果を第14回日本脳卒中学会で報告した。特に神経症状に一致して患側大脳領域の血流低下が証明されており、本モデルの有用性を示す結果であったと考えている。病理所見では明らかな器質的病変を認める例は稀で、本モデルの神経症状が一過性である事実に良く一致した。より重症の病態モデル作製を課題とし、現在研究を継続中である。 2)エラスターゼ製剤投与効果について エラスターゼ製剤の血管攣縮予防効果、特に血管弾性板組織破綻の抑制を期待し、動物実験より検討を開始した。エラスターゼ製剤で現在一般的なものは経口薬に限られており、今回の検討では特注の注射薬を使用した。まず2mg/kgを実験一週間前より筋肉内投与の後、クモ膜下出血実験を行ない、誘発される脳血管攣縮の程度と病理所見につき薬剤非投与例との差異を比較した。結果は残念ながら、本剤投与の有意性を示すものではなかった。薬剤投与法の再検討を中心に研究を続けている。
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