研究概要 |
IFNーγ遺伝子を組み入れ, 表面抗原の発現を増強させた腫瘍細胞を抗原にして宿主を免疫し, 腫瘍を拒絶できる程度の免疫反応を得ることを目的にした. その第一段として, IFNーγ遺伝子を入れた腫瘍細胞の, MHCをはじめとする表面抗原の発現, および腫瘍細胞を皮下に接種した場合の宿主の反応を観察した. 方法:腫瘍細胞にはマウス神経芽細胞腫c1,300を用い, 遺伝子導入にはレトロウィルスベクターpsvx(MuγΔA)を用いた. 結果:IFNーγ遺伝子導入subline, c1300γ3, c1300γ22, c1300γ23を樹立した. 組み入れられた遺伝子はSouthern blot analysisで確認し, IFNーγ産生量はbioーassayにて測定した. このうち最もIFNーγ産生量の高いγ22と, IFNーγを検出できなかったγ3を以上の実験に用いた. MHC classIの発現をNcuthern blot analysis及びimnuncfluorescence Studyにてみると, 親株のc11300がnegativeに対して, IFNーγ遺伝子を入れた細胞は著明に増強していた. これは充分量の anti IFNーγで中和することはできなかった. IFNーγ遺伝子が入った細胞を皮下接種すると, 親株に比べ, 腫瘍の増大が極端に低下し, γ22は2.4×10^6接種でも生着率は7%程度であった. 腫瘍の直径で皮下腫瘍の成長をみると, 親株がほぼ直線的に増大するに対してIFNーγ遺伝子を入れた腫瘍は14〜20日目に一時腫瘍増大が停止し, その時期に拒絶されるものも現れ宿主の免疫反応の活性化が示唆された. 生存曲線でみてもIFNーγ組伝子導入腫瘍担体マウスは生存日数の延長がみられた. 腫瘍に対する宿主の反応をみるために腫瘍内リンパ球浸潤をみると, 被膜よりThy1陽性細胞(Tcell)が浸潤していることが伴った. 結論:IFNーγ導入腫瘍細胞は宿主のゼ疫に必要な表面抗原を発現しており, 宿主の腫瘍免疫を惹起させる可能性が示唆された. 今後の方針:IFNーγ組伝子を組み入れ, 殺細胞能を増強させたlymphocyteを養子免疫療法に用いる.
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