研究概要 |
1.ラットENU張発gliomaの皮下継代および培養株(OBTSGー8)を確立し,各種実験に使用している. 本腫瘍は,Oligodendroglioma-astrocytoma mixed gliomaであったが,継代株はGFAP(-),Sー100(-)である. 2.モルフォリノアンスラサイクリン系化合物MXー2の実験脳腫瘍に対する効果およびpharmacokinetics.新しい抗腫瘍剤MXー2は,脂溶性で静脈内投与により正常脳組織への分布が認められ,脳腫瘍に対する効果が期待できる. (1)ラットおよびヒトグリオーマ培養細胞に対する抗腫瘍効果を検討すると,調べた6株の細胞すべてに低濃度で強い殺細胞効果を認めた. (2)実験髄膜癌腫症ラットをMXー2静脈内投与により治療すると,0.375〜1.5mg/kgの投与量で無治療対照群に比し生存日数の有意の延長を認めた. (3)皮下継代ラットグリオーマ08TSGー8に対し,(2)と同様の投与量で有意の腫瘍縮小効果を認めた. (4)正常家兎にMXー25mg/kg静脈内投与後,大槽部より経時的に髄液を採取し,髄液内濃度を測定したところ,投与後2時間以上,培養グリオーマ細胞に対し殺細胞効果のある有効濃度を検出できた. 3.ヒトグリオーマ組織におけるepidermal growth factor receptor(EGFR)発現および癌遺伝子erbB増幅との関連. (1)凍結手術標本を用いモノクローナル抗EGFR抗体でABC染色を行ったところ,glioblastoma13例中10例で陽性染色が認められ,glioblastomaでは大部分の例でEGFRが発現していることが認められた. (2)同一標本より抽出したDNAを用い,Southern blot法によりerbB遺伝子の増幅が認められた. 4.悪性leptomeningeal tumorに対する新しい治療法として,TNF髄腔内投与の可能性について検討した. その結果,ラットにおいてはTNF髄腔内投与のLD.ナD250.ニD2は静脈内投与よりかなり高いことが示された.
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