目的:前年度(昭62年)の基礎データを基に本年度は主にTNFの併用療法とTNF治療法、特に投与方法の検討と、臨床治験、臨床におけるTNF薬物動態について検討した。 方法:1.TNF併用療法の検討(in vitro):ヒト脳腫瘍培養細胞(KWN細胞)を用い、放射線照射10GyとTNF1000v/mlの併用効果の検討を行った。 :2.TNF動注における成犬正常脳に及ぼす影響の検討;TNF5×10^4U/kgを成犬内頚動脈内に注入後24時間および6日後に2%エバンスグルー1mg/kg注入直後剖検し脳血液関門および正常脳に及ぼす影響を病理学的に検討した。 :3.TNFの臨床治療効果の検討:8例の悪性脳腫瘍患者にTNFを週2回、静注にて25万単位より漸増投与し、CTにて治療効果を判定し、副作用についても検討した。更にTNFの体内薬物動態(髄液移行度、腫瘍内濃度)についても検討した。 結果:1.TNF放射線併用療法では放射線照射後12時間後にTNFを投与した群で最も腫瘍増殖抑制効果が高かった。 2.TNF内頚動注後の成犬正常脳には異常所見はなく動脈内投与は臨床においても可能と考えられた。 3.8例の悪性脳腫瘍患者中2例に部分質解が得られた。副作用は血圧低下と発熱が一過性に出現するが容易に回復し重篤なものはなかった。更にTNFの薬物動態では静注では髄液及び腫瘍内にTNF移行はみられないが、動注では腫瘍内にのみ移行がみられた。 結論:TNFは単独よりも放射線との併用により効果が得られ、静注法よりも動注法がより有効であり、更に局注も含め検討したいと考えている。
|