研究概要 |
目的:脳腫瘍細胞の特異性に関与していると考えられている膜のリセプターのうちTNF,LDLリセプターの検索を行い、更にこれらのリセプターと脳腫瘍の治療効果について検討し、悪性脳腫瘍のより有効的な治療法の開発を行う事を目的とした。 方法:1.TNF,LDLリセプター;脳腫瘍培養細胞を用い、binding assay法にて同定した。 2.TNFの抗腫瘍効果の検討;1)細胞増殖抑制効果.2)細胞周期に及ぼす効果.3)ヌードマウス皮下移植腫瘍縮小効果.4)TNF動注による成犬正常脳の病理学的検討. 3.TNFの臨床治験;1)悪性脳腫瘍患者に対する治療効果.2)TNFの髄液移行度、腫瘍内濃度、異常の項目につき検討した。 結果:1.3種類の細胞はいずれもTNFリセプターを4600〜2400/cell有しておりヒトはラットに比べ4-5倍のリセプター数であった。LDLリセプターも有し細胞により多寡がある事が確認出来た。 2;1)TNFの細胞増殖抑制効果はリセプター数の多い順に強く、ラットではほとんどみられなかった。放射線との併用で作用は増強傾向をみた。2)TNFは細胞周期をG_2+M、S期に同調させる傾向がみられた。3)TNFの皮下移植腫瘍の縮小効果はリセプター数の多い腫瘍に高く、静注より局注がより有効であった。病理学的には4時間後より腫瘍血管の変化が著明であった。4)TNF内頚動脈注射による成犬正常脳の異常はみられなかった。 3.8例の悪性脳腫瘍患者のうち2例にTNF投与で部分寛解の有効例が られた。主な副作用は血圧低下と発熱であり重篤なものはなかった。TNF静注では髄液および腫瘍内にTNFは検出されなかったが動注後腫瘍内で検出出来た。
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