研究概要 |
頭蓋内における脳脊髄液の流れがMRIで観察できる. このMRIを用いて, 非観血的な頭蓋内圧測定法の可能性を探るため研究を行い以下の成果を得た. A.臨床的研究:脳神経外科患者25症例で心拍同期撮影により頭蓋内脳脊髄液腔の髄液信号強度をR波から20,100,200,300,400msec後の各時間で測定した. その結果, 脳のsystolic expansionにより頭蓋内から脊髄腔へ押し出される髄液の流速はR波から20msec以内で最高速に達し, diastolic reductionにより脊髄腔から頭蓋腔へ戻る速度は200msee以降で最高速になることが示された. また腰椎穿刺により髄液を排液し頭蓋内圧を変化させると, 1.心周期内の髄液流の速度パターンが変化することを観察した. つまり頭蓋内圧の変化が髄液の流れ方に大きく影響することを観察した. B.実験的研究:MRIの髄液信号強度と流速との関係を検討するため, ヌイゴンチューブ内に生理食塩水をローラーポンプにより潅流した. その流速は電磁流量計により測定した. 流速が数cm/sec以下の範囲では, 流体のMR信号強度と流速の間にほぼ直線的な比例関係が得られた. 速い速度では, 信号の流失や位相情報の混乱の為, MRI信号による流速の測定はできなかった. 速い流速に対応できるようなMRIの新しいpulse sequenceの必要性が生じた. また頭蓋脊髄腔模型の試作に着手した. すなわち非磁性体のアクリル樹脂を主材料として, 硬貭の"頭蓋腔"と軟貭の"脊髄腔"を連結した閉鎖腔を作成し, この閉鎖腔に導管をつなぎ外部から腔内圧を任意に設定できる構造とし, さらに"頭蓋腔"内にはゴム袋をいれ外部の水ポンプへ導管で連結し拍動性に体積を変化させ, 拍動する"脳"を模擬させた. 次年度から, MRIでの実験を開始する予定である.
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