研究概要 |
先天性水頭症ラットーHTXを用いて,先天性水頭症における脳の発達障害を検索した. 1〔ゴルヂ法〕生後2週齢のHTX水頭症では大脳皮貭錐体細胞に(1)尖頭樹状突起の蛇行,スパインの減少,(2)基底樹状突起の神展や消失,また,スパインの減少や数珠状変化を認めた. これらの所見な先天性水頭症における大脳皮貭の菲洪化には樹状突起,スパイン,軸索,髄鞘の病変または発達障害が関与することが示唆された. スパインの減少はシナプスの形成障害を示唆する所見と推定された. 2〔免疫学的方法〕シナプス小胞蛋白ーSVPー38に対するモノクローナル抗体171B5を用いた関接蛍光抗体法にてHTXの脳に免疫組織化学染色を行った. その結果,(1)蛍光顕微鏡下にシナプスの分布と局在を極めて鮮明に描出することが可能となった. (2)出生後のシナプスの分化を発達を経時的に,また,定量的に解析する目的で,水頭症非発現HTXの大脳皮貭第I層におけるスポット蛍光強度を顕微分光光度計を用いて測定したところ,生後7日から28日の間に蛍光光度が急速に増加する状況を促えることが出来た. (3)水頭症発現HTXについても同様のの定量解析を行い,その結果を水頭症非発現動物における測定値を比較検討したところ,前者では生後のシナプスの形成と発達が有意に障害されている可能性が強く示唆された. これらの結果から,この免疫組織化学的な手法がシナプスの分化・発達・形成の障害を研究する上に極めて有利な方法となり得ることが示唆された. 一方,水頭症発現HTXに短絡術を行い,短絡管依存性水頭症HTXを作製した. これら動物の学習能をY迷路で検索すると,行動生理学的な異常が証明された. 現在これらの行動生理学的異常とシナプスの発達を形成障害の連関を検索しており,これらの研究を先天性水頭症児における精神運動発達遅滞の究明に役立てようとしている.
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