研究課題/領域番号 |
62480312
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
佐藤 潔 順天堂大学, 医学部・脳神経外科, 教授 (10112707)
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研究分担者 |
須田 喜久夫 順天堂大学, 医学部・脳神経外科, 助手 (00206559)
武田 信昭 順天堂大学, 医学部・脳神経外科, 助手 (00171645)
伊藤 昌徳 順天堂大学, 医学部・脳神経外科, 講師 (20095764)
宮岡 誠 順天堂大学, 医学部・脳神経外科, 講師 (70053270)
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キーワード | 先天性水頭症 / 先天性水頭症ラット / 脳室造影 / 核磁気共鳴画像 / ^<14>Cデオキシグルコ-ス / ゴルジ染色法 / 脳室腹腔短絡術 / 大脳皮質 |
研究概要 |
先天性水頭症に対する治療時期の選択はいまだ未解決の問題として残されけている。当教室では先天性水頭症ラットHTXを用い、生後4週齢(神経系の発達過程ではヒトの幼・少年期に相当すると考えられる)の水頭症発現ラットに対して脳室膜腔短絡術を行い、その手術時期(早期・晩期)がいかに脳の神経細胞とシナプスの発達障害を修飾するかについて神経病理学的及び行動生理学的な立場から検討してきた。昭和62年度までの研究成果では生後4週齢に短絡術を行なった場合には、すでに術前に発来した大脳皮質のシナプス形成障害や学習低下を回復しえない可能性が示唆された。この知見を踏まえ、昭和63年および平成元年度には生後7〜10日齢(ヒトの胎生未期もしくは出生直後に相当すると考えられる)の水頭症発現ラットに早期短絡期術を試み、その手術手技を確立した。次いで早期短絡術がいかに神経細胞とシナプスの発達障害を修飾するかについて、1.脳室造影及び核磁気共鳴画像(MRI)による短絡術前後の脳室容積と大脳実質幅の経時的変化、2.^<14>Cデオキシグルコ-スオ-トラディオグラム法による局所脳代謝率の変化、3.光顕および電顕による脳の神経病理学的検索、4.rapidーGolgi法によるspine densityと樹状突起の観察、などの多角的な検討を行ったその結果、生後7〜10日齢における脳室腹腔早期短絡術は脳実質幅の増大、脳室の縮小化、白質随液浮腫の軽減、脳室上衣細胞の形態と配列の正常化をもたらすことが明らかとなった。また大脳皮質各部位の局所代謝率、大脳皮質第II・III層におけるspine density等も早期短絡術群でほぼ正常化しており、生後4週齢の晩期短絡術群の所見を凌駕していることが明らかとなり、先天性水頭症の早期治療が脳の発達障害を未然に防止しうることを明らかにした。本実験は先天性水頭症の胎内治療を再考する秘要性を示唆するものである。
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