1.Dellonら(1984)の方法に準じて確立した末梢神経絞扼障害実験モデルを用い、シリコンチューブを囲繞して8週を経て障害が成立した坐骨神経に神経剥離術(internal or external neurolysis)を行った。その影響を術後6ケ月まで形態学的、電気生理学的に検討するとともに、血液ー神経関門についても観察した。その結果、internal neurolysisは、神経組織に対して極めて傷害的であること、その原因として、神経周膜の損傷、血液ー神経関門の障害が考えられることが合った。 2.卵管結紮用クリップによる坐骨神経圧迫実験では、少なくとも術後24時間で、すでに軸索流の障害が発現することを確めた。すなわち、本法は従来いわれているような慢性絞扼実験のモデルとはなり得ない。 3.いわゆる通水試験、あるいはsaline neurolysisと呼ばれる操作、すなわち神経周膜下に生理的食塩水を少量注入する実験を、新たに開始した。それによれば、正常の坐骨神経においても本法施行直後に神経周膜血管の破綻、脂肪細胞の注出がみられ、血液ー神経関門の破綻が示された。術後1〜4週で神経周膜・内膜に炎応反応と肥厚が認められた。さらに、慢性絞扼実験モデルに通水試験を行ったところ、現在までに得られた知見からすれば、少なくとも電気生理学的には全く回復はなく、むしろ有害と考えられる。
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