研究概要 |
イヌ血液潅流洞房結節・乳頭筋標本を用いて,ニカルジピン(以下N)の心循環系へ与える影響を, 無麻酔状態とエンフルレン(以下E)麻酔下で比較検討した. 13頭の慢性無麻酔犬を作成し,このうち7頭には無麻酔状態のままNを2ug/kg/分で60分間持続静注した(無麻酔群). 6頭には空気と1.7%E麻酔下で,循環動態が安定するまで待った後,無麻酔群と同様にNを投与した(E麻酔群). 測定項目は,供血犬の平均血圧(MAP),心拍数(DHR),PQ間隔,摘出標本での乳頭筋の収縮力(DT),洞房結節の洞調律数(SAR),冠動脈血流量(BF)である. エンフルレン麻酔下での,ニカルジピンのSAR,BF,PQ間隔に与える影響は,無麻酔時と比較して有意差がなかった. Nは無麻酔時のDHRとDTには有意な変化を与えなかったが,E麻酔下では有意にこれらを抑制した. Nは無麻酔時にMAPを減少させたが,その効果はE麻酔下において,より有意に増強された. 無麻酔時と比較してE麻酔時には,Nの心循環系への影響が強く出た. なぜE麻酔時の方が無麻酔時よりも,心循環系への抑制が強く出たのかの機序については明らかではないが,いくつかの可能性が考えられる. 1つの可能性として,E麻酔時には肝血流が減少し,Nの肝でのクリアランスが低下する結果,血中濃度が上昇するということが孝えられる.
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