研究課題
イヌ血液潅流洞房結節乳頭筋標本を用いて、ジルチアゼム(以下D)の心循環系に与える影響を、無麻酔状態とセボフルレン(以下S)麻酔下で比較検討した。Donor犬10頭を無麻酔状態とし、Dを20μg・kg^<-1>・min^<-1>の速度で持続静注した。(無麻酔群)。7頭には空気と2.36%のSの吸入下で人工呼吸を続け、循環動態が安定するまで待った後、無麻酔群と同様にDを投与した。(S麻酔群)。測定項目は、供血犬での平均血圧(MAP)、心拍数(DHR)、PQ間隔、摘出標本での乳頭筋の収縮力(DT)、洞房結節の洞調律数(SAR)である。S自体の無麻酔状態に対する影響、MAP63.9±17%、DHR90.9±8.4%、PQ109±19.6%、DT69.4±8.3%、SAR92.1±3.8%であり、PQ以外は、有意な減少を示した。60分間Dを持続静注した後の各測定値は、Dを注入する前の値を100%とした場合、無麻酔群対S麻酔群で示すと、MAP84±3%対79.7±17.3%、DHR74±2%対68.5±13.5%、PQ148±5%対197±26%、DT63±3%対35.8±18.2%、SAR74±3対74±11%であった。両者間の有意差検定では、S麻酔下のDは、無麻酔状態に比して、有意にDTを制御し、PQ間隔を延長することが分かった。SとDの間には、PQ間隔を延長し、心収縮力を抑制する作用が相乗的に働くことが示唆された。臨床的には、S麻酔中のDの静注使用や、Dの内服投与中の患者にS麻酔を行うことは、循環抑制が強度に出現する可能性があり、十分な注意が必要と思われる。