研究概要 |
成人呼吸窮迫症候群の発生機序として活性酸素の関与が報告され, また肺障害が進行すると肺線維症へと発展することが知られている. これまで肺線維症のモデルとしてブレオマイシン(BLM)が用いられてきたが,BLMによる初期障害に活性酸素が関与する可能性を考え, 1.抗酸化酵素であるカタラーゼ(CAT)やスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)はBLMによる初期の肺障害を軽減ないし防止するか? 2.さらに線維症の発展が修飾されるか? の2点を目的とした. 本年度は主として1の点につき検討する予定であったが, 当初予定していたリポゾーム包含抗酸化酵素の入手が困難となり, 市販のポリエチレングリコール(PEG)結合型抗酸化酵素を購入せざるを得なくなった. PEGーSODに関しては未だ入手出来ていないため, これまでのところPEGーCATについてのみ検討してきた. 1)PEGーCAT気管内注入による肺抗酸化酵素の変化:肺組織中のCAT活性は投与後1, 3, 7, 14, 28日においてそれぞれ平均35.0, 40.7, 20.1, 18.7, 14.8U/g肺であり, 非投与動物における活性が15U/g肺前後であることより, 投与後3日まで高い活性の保たれている事が明らかになった. 2)急性期障害への影響:急性期死亡に関してはBLMのみおよびBLM+CAT両群に差を認めなかった. しかしながら, 麻酔下でのPaO2をみると1ー3日ではCAT投与群においてのPaO2が67.4ー75.9torrに対し, BLMのみの群においては25.9ー60.8torr低値を示し, CATが肺障害の程度を軽減している可能性がうかがえた. しかしながら同時期におこなった気管支肺胞洗浄では上清中の蛋白濃度および細胞数において両群間に差を認めずCATが肺水腫を軽減したとは言い難い. 肺線維化の指標としてのヒドロキシプロリンについては現在測定中である.
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