研究概要 |
ハロセンの嫌気的脱ハロゲン化反応中にラジカル中間体が生成され, それがハロセン肝障害の一因となるといわれている. 本研究はペントバルビタール, ヘキリバルビタール, フェノバルビタール, チアミラールおよびチオペンタールのバルビツレートの前投与が肝ミクロソームの電子伝達系酵素におよぼす影響を調べ, これらの酵素が持つハロセンの嫌気的脱ハロゲン化活性を測定し, バルビタールによる酵素誘導がハロセン肝障害におよぼす影響を調べた. ウイスター系ラットに320μmil/kgのバルビツレートを毎日筋注し, 経日的に肝ミクロソームの電子伝達系酵素を測定した. アミノピリン脱メチル化活性およびアニリンの水酸化活性,ハロセンの嫌気的脱ハロゲン化活性をバルビツレート筋注5回目のラット肝ミクロソームで測定した. その結果,ペントバルビタール,フェノバルビタール,チアミラール,チオペンタール投与によって, 肝ミクロソーム電子伝達系酵素であるチトクロームPー450,チトクロムP_5,NADPHーチトクロムPー450還元酵素,NADHーチトクロムb_5還元酵素が誘導されたが,セコバルビタールでは誘導されなかった. 誘導の強さは,フェノバルビタール,チオペンタール,チアミラール,ペントバルビタールの順であった. Pー450あたりのアミノピリン脱メチル化活性はすべてのバルビツレートで影響が見られなかったが,アニリンの水酸化活性及びハロセンの嫌年的脱ハロゲン化活性はフェノバルビタール,チオペンタール,チアミラール群では有意に低下した. これらの結果はフェノバルビタールのみならずチオペンタール,チアミラールもハロセンによる肝障害の一因となることを示している.
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