アンドロゲン親和性蛋白の性状

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62480333
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 島崎 淳 千葉大学, 医学部, 教授 (10008229)
• 研究分担者: 小玉 孝臣 千葉大学, 医学部, 教務職員 (40143309)
• キーワード: アンドロゲン・レセプタ- / アンドロゲン親和性蛋白 / R1881結合蛋白 / 前立腺肥大症 / 前立腺癌

研究概要

1.アンドロゲン・レセプタ-の部分精製と性状
ヒト前立腺の手術材料より、DNAセファロ-ズとアンドロゲン・アフィニティゲルを用いて約1300倍以上の部分精製をおこない、分子量45Kのアンドロゲン・レセプタ-の断片を得た。昨年度アメリカにおいて発表されたDNAの構造から推定したアンドロゲン・レセプタ-の構造から考えて、45Kの蛋白はアンドロゲンやDNAと結合する部分をもった長さといえる。本蛋白のブロモシアンによる分解産物はN末端加マスクされて分析不可能であった。
今年度アメリカで作られたアンドロゲン・レセプタ-のモノクロナル抗体を贈与された。アメリカとの共同研究の結果、この抗体を用いてアンドロゲン・レセプタ-を検索した。ヒト前立腺肥大症や癌において、レセプタ-は上皮および間質の核に局在し、細胞質にはみられなかった。またレセプタ-のみられる細胞の比率は、癌において組織学的分化度と逆比例していた。
2.アンドロゲン親和性蛋白の性状
プロゲスチン結合蛋白はヒト前立腺に多く存在している。これがヒト子宮にあるプロゲステロン・レセプタ-と異なった結合蛋白であることを見出した。組織化学的にR1881を用いて観察している蛋白は、主としてこのプロゲスチン結合蛋白である。本蛋白の生理的意義は不明であるが、臨床的には前立腺癌内分泌療法反応性と相関し、また生存率とも比例するので有用である。rasp21は前立腺癌でみられるオンコジン産物であるが、この発現とR1881結合蛋白とは関係がみられなかった。

研究成果

• [文献書誌] 市川智彦,島崎淳ほか: "Progression and selection in heterogeneous tumor composed of androgen-responsive Shionogi Carcinoma 114 and its autonomous subline(Chiba Subline2)." Cancer Res.49. 367-371 (1989)
• [文献書誌] 島崎淳ほか: "前立腺の潜在癌と顕性化" Oncologia. 22. 5-15 (1989)
• [文献書誌] 島崎淳ほか: "Receptor・アンドロジェン" 日本臨牀. 47. 585-591 (1989)
• [文献書誌] 島崎淳ほか: "Receptor・前立腺" 日本臨牀. 47. 1332-1338 (1989)
• [文献書誌] 井坂茂夫,島崎淳ほか: "Histological effects of endocrine therapy for prostatic cancer in relation to clinical course." Jpn.J.Clin.Oncol.19. 258-264 (1989)
• [文献書誌] 大島健一,島崎淳ほか: "Effects of Buserelin(HOE 766)on the Dunning R-3327 rat prostatic adenocarcinoma." Asia Pacific J.Pharmacol.4. 167-172 (1989)
• [文献書誌] 島崎淳ほか Androgen dependency of androgen-dependent mouse tumor(Shionogi Carcinoma 115).: "Prostate Cancer:The Second Tokyo Symposium." Elsevier Science Publishing Co., 412 (1989)