1.アンドロゲン・レセプタ-の部分精製と性状 ヒト前立腺の手術材料により、DNAセフアロ-ズおよびアンドロゲン・アフィニティゲルを用いて約1300倍以上の部分精製をおこない、分子量45Kのアンドロゲン・レセプタ-の断片を得た。アメリカで発表されたcDNAから推定されたレセプタ-の構造と対比すると、45Kの断片はDNAおよびステロイドと結合する部分をもつ長さと考えられた。 アメリカとの共同研究により、アンドロゲン・レセプタ-のモノクロナル抗体を用いてヒト前立腺肥大症や癌における存在を検索した。アンドロゲン・レセプタ-は腺細胞、前立腺癌細胞及び間質細胞の核に局在していたが、いずれの細胞の細胞質にはみられなかった。癌においては、組織学的分化変とレセプタ-をもつ細胞の比率が逆比例関係にあった。 2.アンドロゲン親和性蛋白の性状 ヒト前立腺にはプロゲスチンと高親和性結合を示す蛋白が多くみられる。本蛋白はヒト子宮にあるプロゲステロン・レセプタ-とは異なる蛋白であることを見出した。組織学的にR1881を用いて観察出来るR1881結合蛋白は、プロゲスチン結合蛋白が大部分であると推測された。R1881結合蛋白は前立腺癌に対する内分泌療法の反応性や予後と相関するので、臨床的には有用であるが、生理的役割は不明である。がん遺伝子産物であるrasP21は前立腺癌によく発現しているが、この発現とR1881結合蛋白との間には関係がみられなかった。
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