研究概要 |
人精漿中の免疫抑制物質の作用機序と性状については、昨年度レセプターアッセイ、フローサイトメトリー、熱処理、凍結乾燥、酵素処理等により人精漿中のglycoproteinが、NKC-3 cellのIL-2 receptor sideに作用してIL-2抑制効果を生じることを報告した。 本年度は、人精漿中の免疫抑制物質の単離精製を試みるためゲル濾過を行なった。凍結乾燥により濃縮した精漿を、0.05M PBS(PH7.2)で平衡化したsephacryl S-300 column(5×77cm)でゲル濾過を行ない、各分画をNKC-3 cell cultureの系に添加することにより抑制効果の存在する分画を調べた。分画は、5つのピークに分かれ、幅広い抑制活性を示した。 最も抑制活性の強い分画での推定分子量は74万以上であるが、低分子量のところにも抑制活性がみられた。ゲル濾過により、精漿中の免疫抑制物質は、ある程度巨大分子であることが推定されたので、精漿を4℃にて6,800G、27,000G、60,000G、及び105,000G、2時間の条件で超遠心を行ない、上清部分、沈澱部分の抑制活性をみたところ、回転数を上げるにつれ沈澱側での抑制効果が強くなり、105,000Gでは、ほとんど沈澱側に抑制効果がみられた。このことより精漿中の免疫抑制物質は超遠心により沈澱する巨大分子であることが推定された。またrecombinant IL-2(γIL-2)と精漿を混合したものは、そのままNKC-3 cellの系に添加すると精漿によりIL-2活性が阻害されるため、NKC-3 cellは増殖することができないが、両者の混合液を10,5000G、2時間の超遠心を行なうと上清部分にほぼ100%IL-2活性が回収されたことより、精漿中の免疫抑制物質がIL-2そのものを中和したり、IL-2に結合したりすることにより阻害効果を発現するのではないということが示唆され、IL-2 receptor sideでの阻害であることを暗に示唆した。
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