研究概要 |
人精漿中の免疫抑制物質の性状と作用機序を調べるため、recombinant interleukin 2(rIL-2)とIL-2依存性のNKC-3 cellを用い、より単純化したin vitroの系により検討した。1.精漿は、100℃15分、60℃15分の熱処理にほぼ安定であったが、autoclave15分処理では、抑制効果は著しく減弱した。2.各濃度の精漿において、凍結乾燥によっても、ほぼ抑制効果は維持された。3.pronase、papain、periodic acid処理した精漿では、著しく抑制効果が減弱したことから、精漿中の免疫抑制物質はglycoproteinであると考えられた。4.rabbit、boar、goatの精漿においても精漿濃度依存性の抑制効果がみられ、種特異的なものではないことが示唆された。5.精漿を105,000G、2時間の条件で超遠心を行なうと沈澱側に抑制活性が移動した。6.精漿をSephaepxb S-300でゲル濾過を行なうと、抑制活性は分子量74万以上に最も強く認められた。7.IL-2依存性のNKC-3 cellでは精漿濃度依存性の抑制がみられたが、IL-2非依存性のcell lineであるNS-1やYAC-1では抑制効果がみられなかった。8.培養開始時に精漿を加えた方は、精漿濃度依存性の抑制がみられたが、harvest6時間前つまりNKC-3 cellがIL-2で活性化された状態に精漿を加えても抑制はみられなかった。9.精漿存在下で培養したNKC-3 cellを3回洗浄後、精漿を除いた状態で培養するとIL-2に対する反応が回復した。10.^<125>I-rIL-2のNKC-3 cellへの結合は、精漿濃度依存性に抑制された。11.IL-2 receptorに対するモノクロナール抗体を用いたフローサイトメトリー解析ではIL-2 receptorのframe workを認識するといわれているTD4に比べIL-2のbinding siteのepitopeを認識している3CTの方でより蛍光強度が減弱していた。以上より、精漿のIL-2活性抑制の作用機序として、精漿中の免疫抑制物質が、IL-2のreceptorへの結合を阻害することが示唆された。
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