研究分担者 |
中野 優 浜松医科大学, 医学部, 助手 (50172375)
牛山 知己 浜松医科大学, 医学部, 助手 (50176658)
大田原 佳久 浜松医科大学, 医学部, 助手 (80124717)
太田 信隆 浜松医科大学, 医学部, 講師 (50160510)
阿曽 佳郎 東京大学, 医学部, 教授 (00009961)
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研究概要 |
昭和62年度, 本研究者らは15例の死体腎移植を経験した. 全例心停止後の腎摘出であるが, 15例全例において術後1ー6週間の急性尿細管壊死(ATN)がみられた. そしてATN期間中, 15例中9例にシクロスポリン腎毒性がみられ, 7例に急性拒絶反応が出現した. 全例で, 臨床的かつ基礎的に詳細な解析を行った. 参考として, かつて経験した死体腎移植39症例をもさらに検討した. その主要な結果は, 下記に列記する. 1) 組織学的検討: ATN中のシクロスポリン腎毒性と拒絶反応の鑑別診断には, 移植腎生検が最も有用であった. 本研究者らは, 全例で原則として利尿が出現するまで, 1週間隔で超音波ガイドによる移植腎針生検を施行した. その結果, ATN自体では尿細管上皮のdiffuseな空胞変性, シクロスポリン腎毒性では尿細管直部に好発する比較的均一な空胞, 拒絶反応では間質のリンパ球を主体とする細胞浸潤がそれぞれ主たる所見であった. 2) 免疫抑制状態の指標: 末梢血リンパ球サブセットであるOKT4/8が, 免疫抑制状態の指標として最も的確であった. OKT4/8が, 特に0.6以下を示す場合は過剰な免疫抑制状態であり, サイトメガロを中心とするウィルス感染症を引き起した. またその比が高値の場合, 拒絶反応が惹起される傾向があった. 3) 術後透析の安全化:ATN期間中の血液透析は, 無ヘパリン透析が必要不可欠であるが, 本研究者らは, 少量のメシル酸ガベキサートを用いた簡便な高速血液透析を開発した. 4) 免疫抑制について: 12mg/kgより開始のシクロスポリン投与では, 高頻度に腎毒性が出現することが判明した. また腎毒性のためシクロスポリン投与量を減量していくと, しばしば拒絶反応が生じた.
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