研究概要 |
1.蓚酸カルシウム(CaOx)結石の生成に低クエン酸尿の関与が注目されていることから, in vitroでCaOx結晶形成に及ぼすクエン酸の影響を検討したところ, クエン酸やマグネシウムの存在は明らかに結晶形成を抑制した. しかし, CaCx結石患者尿を使ってCaCx結晶形成抑制能をしらべたが,対照尿と比べて有意な抑制能は認められなかった. これは1%,10%の希釈尿を使ったためと考えられる. 2.腎における蓚酸(Ox)転送メカニズムを検討するために,ラット腎より近位尿細管の間腔側の刷子縁小胞(BBMV)を取り出して, 種々の条件下でBBMV内外へのOxの動きを検討した. 1)BBMV内外のpH包配(pH8.5内,6.5外)でBBMVへのOx取込みは典型的over shootが認められ,この変化はanion輸送阻害剤(DIDS)あるいは内外pH包配のない条件下で消失した. 2)BBMV内外pH6.5で, Cl濃度をBBMV内〉外としたCl勾配をつけるとover shootがみられ,これはDIDSかcl勾配のない条件で消失した. このことからBBMV内のOH^-,Cl^-がBBMV外のOx^-と交換されることが示され, 腎尿細管上皮では従来から言われている単純拡散のほかに陰イオン変換性の輸送系の存在することが示唆された. 3.肝における最終段階でのOx生成にかかわる酵素系について検討した. ラット肝ではグリコール酸→グリオキシル酸→Oxの経路を媒介する酵素系(GOD,XOD,LDH)は認められたがグリコール酸→Oxへの媒介するに価する酵素(GDH)をみつけることはできなかった. 今年度はコールターカウンターの据え付けが遅れ, 患者尿の結晶量や結晶形成能の測定は次年度以降になった. また, 腎上皮にも腸管上皮と同様の蓚酸転送系の存在がみつかったことは注目に価する.
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