研究概要 |
腎癌患者末梢血リンパ球はlymphokineの一つであるinterleukin 2(IL 2)下で刺激されることにより 患者自身の腫瘍細胞に対し殺細胞効果を有するようになることをin vitro^<51>chromium-release cytotoxicity assayを用い明らかにしてきた. 上述の結果は, 体外において培養された末梢血リンパ球を患者にもどす治療すなわちadoptive immunotherapyが腎癌に対し有用である可能性を示している. IL2刺激リンパ球はlymphokine-actiyated killer(LAK)細胞と呼ばれている. 本研究では進行腎癌を対象にして, LAK細胞によるadoptive immunotherapyをおこなった. Leukapheresesにより得られたlymphocyte-rich fractionをFicoll-Hypaqueに重層, 比重遠心法にて10^9以上のリンパ球を採取した. このリンパ球をIL 2を含む培養液内で3ー4日間37℃下で培養した. 培養後, 生理食塩水で洗浄をおこない, 経静脈的に投与した. LeukapheresesならびにIAK細胞投与を週に1ー2回おこない, またあわせてIL 2の全身投与も日に1ー2回連日施行した. これまで, 10例の測定可能病変を有する進行腎癌症例に対し, 上述のスケジュールで治療をおこなった. 本治療をおこなっても脳転移, 骨転移ならびに縦隔リンパ節転移巣はまったく反応を示さなかった. しかし, 肺転移巣については, 10例中1例に50%以上縮小のpartial resporseを, 2例25%以上縮小のminor responseを認めた. Partial responseを示した症例は両側肺に多発生の転移巣を有していたが, 本治療法により80%腫瘍縮小がみられた. このため, 残存腫瘍に対しては外科的切除をおこない, 最終的にdiscase freeの状態にせしめ得た. まだ施行症例数が少ないため, 本治療法の腎癌に対する有用性を結論づけるのは困難であるが,少なくとも本治療法は腎癌肺転移巣に対し有効である可能性が示唆された.
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