研究概要 |
1.家族間生体腎移植の術前免疫学的検査法の1つとして, 我々が行っているMLCにおいて患者血清中にMLCの活性化因子が見つかった4症例中, 実際に移植したのは3例であるが, うち2例はaccelerated rejectionを起こして結局graft failureに終わった. のこりの1例は1度もrejectionなく良好な経過をたどった. この症例が他の2例と異なる点は術前にDSTを施行した事である. したがって, MLC活性化因子の存在がrejectionを誘発するのであろう, そしてこれはDSTによって抑制されるであろうという事が臨床的に示唆された事になる(雑誌.移植に投稿予定). ところがDST前後でMLCを施行してみると必ずしもMLC活性化が低下するわけではなくて, その作用機序は不明である. そこでDSTの作用機序解明の目的と輸血ルートによる効果の差を見るために以下の動物実験を計画した. ここで言う輸血ルートとは, 末梢からの静注と, 門脈系に直接入れる2つの方法を意味している. 2.第一に, 雑種成犬を用いて同種腎移植を行い, 2つの異なるルートによるDSTの効果を移植腎の生着日数, ならびに生化学的, 組織学的に比較した. 現在までに16頭の犬に16回の移植を行った. 手技的不成功例は5例だが, 効果判定を下すには至っていない. 第二に同種の関係にある純系ラットのLewis(レシピエント)とACI(ドナー)ラットを用いて2つの輸血ルートからDSTを行ったのちmacrophageのPGE,THX産生能を測定した. 輸血によってPGE産生能は上昇したが, 輸血ルートによる有意の差は無かった. DST前後のMLCについては現在なお検討中である. 3.家族間生体腎移植3症例につき, 術直後から血清化学, リンパ球subpopulationを連続測定し, その推移を自己回帰モデルを使って免疫ネットワークを解析した結果, 興味ある知見を得たので第23回日本移植学会で発表した.
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