研究分担者 |
朝倉 博孝 慶應義塾大学, 医学部, 助手
中井 秀郎 慶應義塾大学, 医学部, 助手
馬場 志郎 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00051889)
出口 修宏 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90118977)
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研究概要 |
本研究を企画したきっかけは家族間生体腎移植症例をretrospectiveに検討した結果、特異な臨床経過を示す4症例に注目したことである。我々が術前免疫学的検査の一つにしてあるMLC法において、患者血清中にMLC活性化因子を有する4症例に遭遇した。うち3例に家族間生体腎移植を施行したところ、2例はaccelerated rejectionのために移植腎を失った。のこり1例は1度も拒否反応を経験することなく極めて良好な経過をたどった。本症例が他の2例と異なる点は、術前にDSTを施行したことである。このことからMLC活性化因子が急性拒否反応を誘発すること、そしてこの作用はDSTによって抑制されることが推定された。以上の臨床的観察をもとに、MLC活性化因子による拒否反応誘発とDSTによる免疫抑制効果の作用機序解明を計画した。初年度は、臨床例においてMLC活性化因子の特異性を証明した(移植、第24巻225ー230,1989)。さらに雑種成犬を用いた腎移植における生着延長から、門派系輸血によるDSTの免疫抑制効果を確認した。第2年度には、DSTの免疫抑制効果には輸血ル-トによって作用機序に差があることに着目し、ラット同種間輸血後、腹腔内マクロファ-ジのPGE,TBX産生能を検討した。輸血ル-トの差によって生着延長効果に差はないが、その効果発現の機序には差のあることが確認された(腎移植・血管外科,第1巻105ー110,1989)。さらに、拒否反応の免疫学的診断は標的臓器、すなわち移植腎での免疫反応を検査することによりはじめて可能になると判断し、反復して組織を採取する必要性から、fine needle aspiration cytology (FNAC)応用の可能性につき雑種成犬を用いて検討した(泌尿器科紀要,印刷中)。第3年度は、これまでに得られた結果の補強実験をするのにとどめ、新たな実験は行わず、報告書作製を意図して、得られた研究成果を学会、雑誌に発表した。
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