(1)抗ヒトTHG蛋白に対する兎抗血清を作製し、これを用いて一昨年に正常ヒト血清中のこの蛋白の存在を見出し得た。その後膀胱尿管逆流を示し、腎孟腎炎を再発する患者等で血清中に遊離するTHG蛋白量を追跡したが感染発症時に蛋白質の増加を示した症例は見られなかった。又尿中に遊離する蛋白量も、抗原抗体反応のみならず、蓄尿してから塩析操作を行って定量する方法を用いてもやはり増加を示す症例は見られなかった。尚、腎組織中のこの蛋白の分布の変動を見る予定も立てていたが(蛍光抗体法若しくは酵素抗体法を用いる)腎摘除に適した症例が未だ見られず実施し得ていない。 (2)犬を用い、2週間尿管の完全閉塞を行い、その後開放するモデルを最初に作製し、抗イヌTHG蛋白を用い、尿中に遊離する蛋白量の変化を追跡することを先ず試みた。しかし手術操作に伴う感染例が多く、一定の傾向を示すに至らず、非感染例と感染例の比較対照を行い得るに至らなかった。 次に、ラットでは逆行性腎感染が容易に作製し得ることから、抗ラットTHG蛋白抗血清を作製し、閉塞と感染の合併モデルと単純な感染モデルとの比較を手始めとし、次に感染成立後閉塞を加えることで、第二次反応として血中に遊離するTHG蛋白に対する自己抗体が得られる可能性について検索を行うことに着手したが、ラットの尿中THG蛋白の分離精製が容易でなく、現在採尿法に工夫を加えている段階である。
|