研究概要 |
婦人科悪性腫瘍の中では卵巣癌及び子宮体癌の早期発見はしばしば困難である。そこで、我々は各種婦人科悪性腫瘍に対する数種類の単一クロ-ン抗体を作製し、血清中の抗原の測定系を確立し、臨床応用を企つた。免疫原として、子宮内膜癌細胞株を用い、免疫組織染色で癌に広く反応するが正常組織には反応性の低い数個のモノクロ-ナル抗体を得た。そのうち1G9は正常、悪性を問わず粘液に、10B10はO型血球に強い反応を得た。MCA-97は良性、悪性の扁平上皮には反応せず、腺癌に強く反応した。MCA-97を用いたRaversed passve himagglutination assay(RPHA)系を作製し、各種疾患の血清値を測定した。子宮内膜癌の32%、卵巣類内膜癌の54%に高値を示した。MCA-97の認識抗原はN-acetglucosamine,D-galactoseの糖鎖を有する700K dolton以上の高分子糖蛋白であった。これら血清診断マ-カ-の作製を通じて、癌化には糖鎖抗原の変化が重要な意味を持つことが示された。免疫組織学的検討では血液型H物質、Lewis-b抗原が子宮内膜癌及び胎児に発現し、癌胎児性格を持つことが示され、Lewis-aは癌に特異性が高いことが示された。さらに血清診断マ-カ-として、消化器癌に特異性の高いCA19-9(sialyl Lewis-a)の異性体であるsialyl LewisXi抗原も血清中及び癌組織に高率に存在し、Fucose Tramferase活性上昇が示唆された。さらに、ムチン性糖鎖の母核構造であるsialyl Tnも卵巣癌患者血清中に高値をとることが示された。以上の様に、癌化に移糖鎖構造の変化が極めて重要で、これを同定することが臨床上有効な腫瘍マ-カ-作製の第1歩と考えられた。
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