研究概要 |
糖脂質は細胞表面に存在し, 細胞相互の認識やレセプターとしての機能を有している. そこで糖脂質と生殖, 癌化とのかかわり合いを調べるために, ヒト子宮内膜における糖脂質の分析を行った. 1.正常体内膜に於ける糖脂質とホルモンの影響 糖脂質は中性, 酸性画分に二分されるが, 前者としてはCMH,CDH,CTH,globosideが, 後者としてはGD3,GD1a,GM3,シアリルパラグロボシド, スルファチドの存在することが確認され, 特にスルファチドは分泌期に高濃度であり, progesteroneと関連していることが示唆された. 2.体内膜の癌化に伴う糖脂質の変化 正常内膜と同様, 中性, 酸性二画分が認められたが, 体癌では正常では見られない様な長鎖構造を有する中性糖脂質が存在した. また当研究室で樹立した十数種の培養細胞株の内, 体癌由来株のみに硫酸化糖脂質が証明された. 3.糖脂質を認識するモノクローナル抗体(Mab)の作成 申請者の作成したマウス型MSNー1抗体は, 糖脂質上の血液型物質ルイスbをエピトープとしており, さらにTLC免疫染色で長鎖中性糖脂質の一成分と反応することを明らかにした. また本Mabは正常内膜では殆ど反応せず, 体癌では85%の症例と反応したことから, 体癌の免疫学的診断法に応用し得る可能性が示唆された. また申請者の作成したヒト型HMSTー1抗体はパラグロボシドを認識することを証明し, 体癌の臨床に一灯を点じた. 4.モノクローナル抗体の臨床応用への基礎研究 MSNー1抗体のフローサイトメトリーへの応用の可能性について, 培養細胞, 臨床材料を用いて検討したところ, 体癌細胞で高い数値を示す症例の存在する事が明らかとなり, 今後研究を続けて行く価値のあることが示された.
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