昭和62年度および昭和63年度の研究において、cーmyc癌遺伝子は胎盤絨毛の増殖を制御し、c-sis癌遺伝子も同様に胎盤絨毛の増殖に関与することが明らかとなった。一方、cーfms癌遺伝子は胎盤絨毛の分化を制御することも示された。このことより、癌遺伝子は正常細胞の増殖・分化能と密接に関連し、その機能を制御することが明確にされた。最終年度である本年では、胎盤絨毛を発生母地とする絨毛性疾患(胞状奇胎、絨毛癌)についても検討を加え、cーmyc、cーfms 両癌遺伝子は絨毛性疾患の増殖・分化にも深く関与することを示した。しかしながら、cーsis癌遺伝子は絨毛性疾患には関与しないことが判明した。これらより、人胎盤系で発現される各種癌遺伝子は正常胎盤絨毛細胞の増殖・分化に関与するばかりでなく、絨毛性疾患の発生機序とも密接に関連していることが示された。
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