最終年度は、昭和62年度および63年度の研究結果を一歩押し進め癌遺伝子は正常胎盤絨毛細胞のみならず、絨毛性疾患の増殖・分化能とも深く関与することを示した。概略は以下の通りです。 1)c-myc mRNAは妊娠初期のC-タイプの絨毛細胞に発現される。又脱状奇胎でも増殖傾向の強いCタイプおよびSタイプの細胞に発現し、絨毛癌では癌を構成するすべての細胞に発現が認められた。 2)c-fms mRNAは中期から後期にかけてSタイプの絨毛細胞に発現し、また絨毛性疾患でもSタイプの細胞に発現が認められた。 3)c-sis mRNAは妊娠初期のC-タイプの絨毛細胞に発現されるが絨毛性疾患ではその発現は認められなくかった。 以上より人胎盤系で発現される各種癌遺伝子は正常胎盤絨毛細胞の増殖・分化に関与するばかりでなく、純毛性疾患の発生機序とも密接に関連していることが示された。
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