研究概要 |
斜視の原因には、眼筋自己受容器が密接に関係している。一方斜視の形成には、光刺激が関与している。そこで斜視の形成過程は眼筋自己受容器と光刺激の相互作用によることを研究した。対象は1才2ヵ月から7才の内斜視の小児、15才から62才までの外斜視の患者である。方法はフラッシュVECP検査と筋電図検査によった。フラッシュVECPの誘導は、O_1,O_2から行なった。フラッシュ刺激は右眼、左眼、両眼に行なった。網膜全視野刺激となるように光照射を行なった。筋電図は水平4直筋同時記録を小児(内斜視)では全麻下で、外斜視では覚醒下で記録した。内斜視の症例では、両眼刺激のVECPはO_1とO_2の電位に差はみられなかったが、1眼を刺激したときには、同側の電位が大きく、反対側の電位が小さい例があった。全例に全麻下にも関わらず内直筋の異常放電がみられた。しかし、VECPの電位に左右差がみられた例と、見られなかった例との間には、筋電図では差がなかった。外斜視ではVECPでO_1,O_2との間で差がある症例はなかった。外斜視の症例では全例に斜視眼の異常放電がみられた。眼筋自己受容器は外斜視では交差性に、内斜視では非交差性に作用している。また0.61x以上の光刺激がなければ内斜視、外斜視も斜視は消失する。眼筋自己受容器の作用は、光刺激によるインパルスが無くては無効になる。以上のことから、内斜視のVECPに交差性の電位よりも非交差性の電位が大きい例があったことは、先天的に視路の交差繊維に異常のある例に内斜視が発生しやすいことが推察された。
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