研究概要 |
本研究ではヒト骨肉腫由来の細胞株(HOS)に分化誘導物質(βーグリセロリン酸)を作用させ, 電子顕微鏡観察による細胞内構造体の解析, また分化マーカーとしてのアルカリフォスファターゼ(ALPase), オステオネクチン, グラ蛋白質等の発現を指標として, HOSおよびKirsten株肉腫ウイルスでトランスホームした細胞株(KHOS)の分化能および分化過程の解析を行なうことを主目的とした. 62年度において得られた成果は次の通りである. 1.HOS細胞のALPaseの比活性は細胞密度に依存してconfluent状態になるまで上昇し, その後は一定に保たれていた. また電顕所見から本活性は細胞膜に局在していた. 2.HOS細胞をβーグリセロリン酸存在下で培養したところ, 培養3週間でCaの沈澱が認められ, 4ー5週の培養細胞を電顕観察したところ, 基質少胞様物質の他, 直径が数倍大きなelectron dense vesicleが退縮つししある細胞の細胞質に認められ, これらが石灰化開始部位である可能性が示唆された. また石灰化部位を分析電顕で観察したところ, Caー8/Pー6の組成を持つ未成熟ハイドロキシアパタイトであることが判明した. 3.以上の結果から, HOS細胞は骨芽細胞の持つ分化能をもつことが示唆された. 一方KHOS細胞は, ALPaseの発現, Caの沈着ともに認められなかった. 4.骨芽細胞の分化マーカーとしてのオステオネクチンに対するcDNAをクローニングし塩基配列の一部を決定した. 以上の成果をふまえ63年度においてはアルカリフォスファターゼ, オステオネクチン, グラ蛋白質遺伝子の発現を分子レベルで検討する計画である.
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